急急如律令って何?呪符・霊符・護符3
『急急如律令』と『鬼字』
往古、鬼が家に忍び寄るのを阻むため、
屋根の上に鬼瓦を載せる習わしがあった。
鬼瓦とは、その名のごとく鬼の面容を持つ瓦のことである。
これは「鬼をもって鬼を制す」という思想に基づく風習であった。
鬼の力、即ち鬼瓦の力により、邪悪なる鬼を払い除けていたのである。
呪符も、鬼瓦と同様の役割を果たしている。
呪術使いは、邪鬼を追い払うため、鬼の力に依拠していた。
ゆえに、昔の呪符には、「鬼」または「鬼神」の字が書き記されていた。
日本に広まった急急如律令系の呪符にも、鬼の字が刻まれている。
「急急如律令」という表記の上に、「鬼」あるいは「鬼神」との文字を配置し、「鬼急急如律令」あるいは「鬼神急急如律令」と表記されたのである。
しかしながら、「鬼」や「鬼神」の文字は省略可能であり、単に「急急如律令」だけでも構わない。
「急急如律令」は元来、声に出して唱える呪文として用いられていた。
呪文の構成は至って容易である。
願望や決意を述べた後に、「急急如律令」と唱えるのみである。
急急如律令は、「即刻に実行せよ」という意味を込めており、
「金運上昇急急如律令」と唱えれば、
「今すぐに金運を高めよ」という呪文となるのだ。
このような呪文の仕組みを理解していれば、誰でも容易に呪文を作り出すことが可能なのだ。
「金運上昇」という言葉の代わりに、「一攫千金」「十客万来」「ギャンブル必勝」といった表現を用いて、様々な呪文を創り出すことができる。
呪術の仕組みは、人々が思っているほど複雑ではないのだ。
例えば、古式の呪文である「休息万命 急急如律令」が存在する。
これは、風邪を引いた時に唱える呪文であり、「休息万命」は「体を休ませて長生きする」という意味を持つ。
要するに、「今すぐに体を休ませ、風邪を治し、私を長寿に導け」という意味を込めて唱えられていたのだ。
現代の私たちは、「休息万命」という古めかしい表現を使う必要はない。
代わりに、「悪病退散 急急如律令」や「悪病平癒急急如律令」といった言葉を唱えれば良いのだ。
呪術は時代と共に進化し続けるものなのだから。
呪符
呪符の話に戻ろう。
「急急如律令」の上に置かれる鬼字には、
まさしく屋根の上に置く鬼瓦と同様の役割がある。
邪鬼を追い払ったり消し去ったりする役目を果たすのだ。
つまり、鬼字は、あなたを守ることを象徴しているのだ。
しかし、あなたを守るからといって、その鬼が優しく穏やかな存在であるわけではない。
鬼字は、恐ろしい化け物としての本質を持ち続けているのだ。
昔の呪術師たちは、呪符に鬼を宿らせることで、怨敵を呪い殺したり、怨敵が放った邪鬼を跳ね返したりした。
しかし、庶民が自分自身で呪符を作る場合は、わずかに異なる役割がある。
特殊な能力を持つ呪術師とは異なり、一般の人々は自分の心に鬼を宿らせるために呪符を用いるのだ。
つまり、あなたが呪符を作る場合、その鬼を白分の心に宿らせ、鬼に対して命令を下すのだ。
のろいの符
呪符は、「のろいの符」であり、神さまや仏さまにお祈りを捧げるためのものではないことを忘れてはならない。
呪符は、憎しみや恨みの感情を高め、自分の内に眠る恐ろしい鬼を呼び起こすために用いられるのである。
庶民が作る呪符において、鬼字は自己に宿る「我鬼(がき)」を具現化しており、呪符はその我鬼に向かって命令を下すために作られるのだ。
具体的には、呪符に込められた思いとともに、我鬼への命令が繰り返し唱えられる。
「今すぐに、邪鬼を追い払い、願い事を叶えよ」と。
この命令によって、呪符は憎しみや怨念の力を高め、自分の内なる我鬼を覚醒させるのである。
そして、恐ろしい我鬼が目覚めることで、願い事の達成を成し遂げる強大な力が発揮されるのだ。
呪符の力は、ただ単に願いを思い描くだけではない。
強い怨念という炎によって、恐るべき我鬼が呼び覚まされ、その力が爆発するのである。
次回は、
呪符に込められた念のお話をしましょう。
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